ヘルニアの種類と従来の根治術について

ヘルニア診療の流れ:鼠径ヘルニアの場合

まずは医師や看護師へご相談ください

virus_fukutsuu成人の鼠径ヘルニアは自然に治ることはなく、有効な薬や運動療法もないため、手術のみが根治可能な治療です。
以前から、ヘルニアバンド(脱腸帯)を使用している方もおられますが、これらはヘルニアを外から押さえることで、一時的に鼠径ヘルニアの症状を軽くする対症療法ですが、むしろ圧迫により皮膚の障害や睾丸の萎縮を招くこともあり、治療ガイドラインでは推奨されていません。
busy_man
「太ももの付け根に違和感や痛みがあり、うっとうしい」「スポーツをする時に邪魔になる」「恥ずかしくて、友達と温泉に行けない」などと悩んでいる方も大勢おられるにもかかわらず、本邦では、多くの方が「忙しい」とか「恥ずかしい」などの理由で積極的な治療をためらっていると考えられています。

nomikai_happy一方で、鼠径ヘルニアを放置すると、5%程度の確率で嵌頓(かんとん:脱出した腸などが元に戻らなくなること)することがあり、その場合には緊急手術が必要となり、命に関わることもある病気です。
いつまでも悩まず、まずは外科を受診し、適切な時期に早めの根治手術を受けることで、アクティブな生活を送られるようお勧めします。

日本バプテスト病院での外来受診から退院後の生活まで

 medical_byouin_machiaishitsu当院での、鼠径ヘルニアの外来受診から退院後の生活までの流れをご紹介します。
なお、実際の内容は患者さんの状態によって異なる可能性がありますので、一例としてご覧ください。

1.外来受診

外来での診察(視診、触診)により、鼠径ヘルニアと診断しますが、複雑なヘルニアやkenkoushindan_choushinki鼠径ヘルニアに似た大腿(だいたい)ヘルニアが時々見られるため、腹部の超音波検査やCT検査を受けていただくことがあります。

kusuri_nomu診断がつきましたら、病態や手術法についてご説明し、ご本人、ご家族の治療の希望を伺った上で術前検査を受けていただき、殆どの方はその日のうちに手術の日程を決めます。

ただし、他の病気(例えば、心臓病や呼吸器疾患)を治療中の方は、その疾患の主治医に手術に関する注意事項を確認したり、特殊なお薬(特に、血液の凝固を妨げる薬)を服用中の方に関しては、休薬が可能かどうかを確認する必要があるため、他科受診をしていただく場合があります。※当院外来表はコチラ

2.術前検査

echo_kensa
安全な麻酔、手術のため、血液検査、尿検査、レントゲン、心電図、肺機能、心臓超音波検査などを受けていただきます。時に、これらの検査で、これまで元気に生活しておられた方でも、心臓などに異常が見つかることもあります。

そのような場合は、該当する診療科の診察を受けていただき、それらの治療を術前に優先して行うこともあります。
ヘルニアの手術は大きな手術ではありませんが、安全な状態で手術を行うことが重要と考えます。
※中央検査部について詳しくはコチラ 
※放射線部について詳しくはコチラ

3.いざ、入院へ

入院の期間は、患者さんの状態や、手術方法により異なりますが、当院では、ご高齢の方も多いため、原則として3泊4日としています。以下に、実際の3泊4日の入院パターンをご紹介します。

 

medical_nyuin_doctor_man① 入院1日目

病棟において、麻酔科の術前診察、看護師の入院、術前オリエンテーションを受けていただきます。特に活動に制限はなく、シャワー等も入れます。食事は、普段通りに食べれます。眠前に、睡眠導入剤、緩下剤を服用します。

 

tenteki_yuketsu_pump_man② 手術当日(入院2日目)

朝から術前の点滴を始めます。食事や飲み物は摂ることはできませんが、必要な内服薬は服用します。手術の予定時間に病室から手術室へ移動します。当院ではご家族、看護師の付き添いのもと、車いすで手術室へ入室することが多いです。

 

medical_zenshin_masui③ 手術室では

痛みのない手術を受けていただくため、腹腔鏡下手術では全身麻酔、それ以外は腰椎麻酔に静脈麻酔を加えた麻酔の下に、手術を行います。手術時間は、腹腔鏡下手術では通常2~3時間程度、それ以外では1~2時間程度です。麻酔指導医のもとで、熟睡していただいている間に手術は終了します。術後は、ベッドにて病棟に戻ります。

 

medical_tenteki④ 手術後は

5~6時間程度はベッド上で安静にしていただきます。術後は、必要に応じて鎮痛剤を内服、点滴しますが、痛みを強く感じる場合には、看護師にお伝えください。
麻酔の覚め具合に応じて、水分摂取を再開します。食事は翌日から召し上がっていただけます。

 

shower_man⑤ 手術の翌日(入院3日目) 

手術後の創(傷口)の観察を行い、必要に応じて半透明の保護材(テープ)の交換を行います。このテープには、ある程度の防水性がありますのでシャワー浴なら可能です。午前中には創の痛みがあるかもしれませんが、通常、午後からは急速に楽になります。退院後の注意事項について医師、看護師、薬剤師等から説明があります。

 

 taiin_miokuri⑥ 手術後2日目:退院日 

痛みも軽度になり、手術創に問題なければ、退院可能です。ゆっくり歩いて退院していただきます。
退院後は、注意事項をお守りください。
特に、入浴はシャワーが望ましいですが、もし手術創にお湯がしみ込んでも、慌てず水分をふきとって、新しい保護材を貼ってください。

※入院のしおりはコチラ
※入院時の寝具・日用品のレンタル「アメニティ」について詳しくはコチラ
※麻酔科について詳しくはコチラ
※薬剤部について詳しくはコチラ

4.退院後

sport_jogging_man
約1週間後に外来を受診していただきます。外来では、痛みなどの症状をお聞きし、手術創の状態を観察し処置を行います。
散歩などの軽い運動は、痛まない程度、疲れない程度に行えますし、仕事もハードなものでなければ、体調に応じて再開できます。
ジョギングなどの運動や軽度の筋力トレーニングは、通常術後3週間後くらいから身体の調子に合わせて再開しましょう。

5.再診(1ヶ月後に外来受診)

magnifier2_nurse
問題がなければ、約1ヶ月後に再度外来を受診していただき、症状・創ともに問題がなければ、治療終了です。
以上の内容で解らないことやご希望などがありましたら、遠慮なく医師や看護師に質問や相談をしてください。

6.再発について


magnifier1_doctor鼠径ヘルニアの手術を受けたあとに、同じ部位が再度鼠径ヘルニアになることを再発といいます。鼠径ヘルニアの再発率は、手術方法により大きく変わりますが、従来からの筋肉の膜を縫い合わせる方法では約10%の再発率と報告されていましたが、最近の人工補強材(メッシュ)を使う手術方法での再発率は1%以下といわれています。再発時期としては、術後1~2年後が多いですが、術後何年もたってから起こることもあります。

monshin_doctor_serious症状としては、手術前と同じようなふくらみがみられますが、痛みのみが症状のこともあります。また、再発でも嵌頓(かんとん)することがありますので,このような症状に気づかれた場合には、早めに病院を受診してください。

手術をした反対側に鼠径ヘルニアが出た場合、これは全く別のヘルニアで、再発ではありません。しかしながら、鼠径部の筋肉の膜が弱る病気ですので、一方が鼠径ヘルニアになった方は、反対側もなりやすいと言えます。だいたい、1割以上の方が、反対側もヘルニアになるといわれています。

7.再発を防ぐために

job_hikkoshi_taihen

鼠径ヘルニアの再発には手術法が大きく関係することが解っていますが、以下の再発原因をできるだけ避けることも大切です。


metabolic_boy例えばお腹に力がかかり腹圧が高くなることによって起こりやすくなるといわれているため、日常生活では、腹圧が高くなることを避けるために、重いものを持つのを避けたり、立ちっぱなしの状態を少なくすることが大切です。
肥満も原因の一つとされていますので、体重を減らすことも有効でしょう。便秘症、前立腺肥大や咳などでも、お腹に力がかかる状態となりますので、これらの病気を治療することで、ヘルニアの原因を取り除くことが重要です。

fukkin_man
また、腹筋体操などの筋肉強化のトレーニングを行う人がいますが、やはり腹圧をあげることとなり、再発防止には効果がありません。
以上のように、再発予防は、年齢、体力、生活スタイル等により色々ですので、担当医にご相談ください。