放射線科

診療内容

最新機器と、経験豊かなスタッフ陣で正確でスピーディーな画像診断を

放射線科とは?

放射線科は、どんな事をする診療科であるか、ご存じでしょうか。

放射線科には、大きく分けて、画像診断科と放射線治療科があります。画像診断科には、CTやMRIやⅩ線撮影やマンモグラフィーなどの一般画像診断科と、ラジオアイソトープを用いた核医学画像診断科があります。
放射線治療科は、ライナックなどの放射線照射装置を用いて体の深いところのある癌の治療をするところです。

当院の放射線科は一般画像診断科で、64列CTや1.5T高磁場MRIやデジタルマンモグラフィーやCR(コンピューターⅩ線撮影)やDR(デジタル透視装置)や骨密度測定装置から、毎日多くの画像データが送りだされます。これらの画像データは、PACSと言われる画像電子管理電送システムに転送され、その瞬間から院内の電子カルテ端末で各科の先生方が瞬時に参照することができるようになります。

また画像情報はPACSへ転送されると順次放射線科医師により読影され、おおよそ1時間以内に先生方のもとへ画像診断報告書(レポート)が電送されます。その瞬間からは、画像と読影報告書のセットが院内どこでも先生方が参照可能となります。

いくら優れた画像情報や報告書でも先生方の元へお届けできなければ意味がありません。この意味において、CTやMRIなどの高精度画像診断装置と同様にPACSの性能も重要となっています。
当院では2年前にPACSが昨年高精度のものに更新され、高性能画像診断装置の性能が余すところなく引き出されています。

病気には、画像診断が有用なものもあれば、あまり役立たないものもあります。画像診断が役に立つ病気は、腫瘍や膿瘍や動脈瘤などの占拠性病変です。これらは、それそのものの発見が診断と治療に直結するからです。
その一方で、神経系の病気などの症状などの分析が重要な病気では、画像のみでは診断に到達することは難しくなります。
両者のいずれの場合でも、丁寧な診察や問診なくしてやみくもに画像診断を進めることは、無用な医療被曝の増大と医療資源の無駄遣いにもなる為、厳に慎まなければなりません。

高精度の画像診断装置やPACSと言われる画像電子管理電送システムがしっかり機能して、はじめて良好な画像診断をご提供できるようになります。
そして検査にあたっては、良好な画像が提供できるように、また安全確保のために、それにかかわるスタッフが常に努力をしてはじめて機器の高性能を引き出すことができます。
将来、皆様にお会いすることがありました際には、誠心誠意かつ全力で業務にあたらせて頂きますので、よろしくお願い致します。

当院で画像検査を受けるためには?

当科では直接の外来診療はしておりませんので、当科で検査を受けられるためには以下のいずれかを経て受けて頂くことになります。

  • 当院の各科の外来を受診頂くか入院された方で、主治医が画像検査が必要と判断した場合
  • 当院の人間ドックを受検された方で、画像検査がメニューに組まれている場合
  • 院外の医療機関(開業医など)を受診された方で、受診先の主治医が当院で画像検査を受けるべきと判断された場合

もし当院でCTやMRIなどの画像検査を受けられたいと思われた場合は、以上の窓口へご相談ください。

放射線科スタッフ

放射線科は地下1階にあり、放射線科医2名(常勤1名・非常勤1名)、診療放射線技師6名(内女性3名)、看護師1名、事務職1名の総勢9名の小さな所帯です。人数は多くはありませんが、年間8500件以上のCTやMRIをはじめとするたくさんの画像検査に、持てるマンパワーをフル動員して日々取り組んでいます。

最近の症例から

昨年度の提示症例(症例1-5)に、新たに症例6-10を追加しました。

症例1 脳下垂体ラトケ嚢胞

MRIのT1矢状断像
MRIのT1矢状断像
トルコ鞍から上方に伸びるT1高信号の嚢胞性病変(図の矢印)があり、脳下垂体は後方へ押しつけられ、視神経(視交差)がやや持ち挙げられている。これだけの大きな占拠性病変なのにトルコ鞍の拡張がないのは下垂体腺腫などの下垂体腫瘍では不自然である。
視交差へ影響しつつあるため、視力障害があれば脳神経外科で手術適応となると思われる。
MRIのT2冠状断像
MRIのT2冠状断像
トルコ鞍から上方に伸びるT2やや低信号の嚢胞性病変(図の矢印)があり、脳下垂体は下方へ押しつけられ、視神経(視交差)がやや持ち挙げられている。T1高信号T2やや低信号から高蛋白液を内容とする嚢胞性病変と思われ、本症と判断された。
視交差へ影響しつつあるため、視力障害があれば脳神経外科で手術適応となると思われる。

症例2 頭蓋内発生の内頸動脈瘤

脳動脈CT血管造影(CTアンギオ)
脳動脈CT血管造影(CTアンギオ)
左-内頸動脈CTアンギオで、嚢状に突出する脳動脈瘤が認められる(図の矢印)。CTでは造影剤を静脈注射することにより動脈など血管がよく写るようになり、タイミングを動脈相にあわせれば、血管造影のような画像を作成できる。
本例ではMRIでは実施していないが、MRIでも血管造影のような画像を造影剤を使わずに得ることができる(MRアンギオ)。

症例3 解離性上腸間膜動脈瘤

造影CT冠状断像
造影CT冠状断像
冠状断造影で、上腸間膜動脈の解離(図の矢印)が明瞭に描出される。本例ではCTアンギオ(造影CTで血管造影に近い画像を得る)は実施していない。本症では突発する腹痛で発症し、動脈閉塞の程度がきついと急性小腸壊死の陥るため、早めの受診や処置が重要である。
造影CT横断面像
造影CT横断面像
上腸間膜動脈起始部に解離(図の矢印)があり、内径の拡張とともに右側の真腔と左側の偽腔に分離し、偽腔が血栓化している。幸いにして、真腔が閉塞しなかったため、小腸の血流はなくなることはなく、腹痛があったものの大事には至らなかった症例である。

症例4 急性虫垂炎

造影CT冠状断像
造影CT冠状断像
虫垂が腫大し、内部に膿(図の矢印)がたまり、虫垂結石(図の矢頭)も存在している。CTなどの画像診断は急性虫垂炎と他の急性腹症との鑑別に有用なため、最近では必須の検査となりつつある。

症例5 回腸憩室に合併した傍回腸膿瘍

造影CT冠状断像
影CT冠状断像
終末回腸(図の矢頭)の腸間膜側に膿瘍(図の矢印)が生じ、周辺に炎症が波及している。手術では回腸に憩室が生じ、そこにできた穿孔から膿瘍が生じ、周辺には腹膜炎を合併していた。

症例6 ウィルス性脳髄膜炎に伴う一過性脳梁膨大部病変

MRIのDWI横断面像
MRIのDWI横断面像
脳梁膨大部がDWIで部分的に高信号となっている(図の矢印)。
20歳代の男性で、1週間前から高熱と頭痛があり、脳髄膜炎を疑って脳MRIを撮影したところ、脳梁膨大部がDWIやT2で部分的に高信号化していた。この所見は「一過性脳梁膨大部病変」と言われ、通常は一過性かつ可逆性で予後良好とされる。あらゆる脳炎脳症の経過中に発症することがあるとされているが、稀にしか見られない所見である。
ウィルス性脳髄膜炎では、脳MRIでも所見に乏しいことが多く、本例でも「一過性脳梁膨大部病変」以外は所見を認めなかったが、本所見の存在でウィルス性脳髄膜炎の診断がより強固となった。 1週間後の経過観察のDWIでは、脳梁膨大部は当初より信号がかなり低下し、一過性病変であることを反映していた。なお原因ウィルスは特定できていない。
なお本症は本邦では時々症例が報告されているが、本邦以外では報告は少ない。本邦ではMRIが広く普及していることと、国民皆保険制度の元で諸外国よりも安い費用でMRI検査を受けることができることが大きいためではないかとされている。
MRIのフレア横断面像
MRIのフレア横断面像
脳梁膨大部がフレアでも部分的に高信号となっている(図の矢印)。
1週間後のMRIのDWI横断面像
1週間後のMRIのDWI横断面像
1週間後の経過観察のDWIでは、脳梁膨大部は当初より信号がかなり低下した(図の矢印)。

症例7 小脳橋角部の石灰化が著明な髄膜腫

脳単純CT横断面
脳単純CT横断面
左-小脳橋角部の頭蓋骨(錐体骨)と接する内部に石灰化を伴う腫瘤(図の矢印)。 90歳代の女性で、右頬の圧痛と腫脹があり、副鼻腔炎を疑って副鼻腔単純CTを撮影したところ、脳腫瘍がみつかった。腫瘍は左-小脳橋角部にあり、頭蓋骨と小脳テントに接しており、内部に著明な石灰化を伴っていたことから、髄膜腫と診断された。
髄膜腫は良性脳腫瘍の代表的な存在で、脳の表面を覆っている脳髄膜から発生する。そのため一部の例外を除いて大多数は頭蓋骨の内側や頭蓋底や小脳テントや大脳鎌などに接して存在する。中高年女性でやや多く見られ、稀に悪性のことがあるが、大半は良性で進行は遅い。周囲の脳や脳神経を一定以上圧迫したり、上矢状洞などへ進展しない限りは無症状なので、たまたま実施された脳の画像検査でみつかることが多い。このため見つかっても手術は行われず、経過観察となることが多い。
脳単純CT冠状断
脳単純CT冠状断
左-小脳橋角部の石灰化を伴う腫瘤(図の黄矢印)は小脳テント(図の赤矢印)と頭蓋骨に接している。

症例8 Groove pancreatitisの急性増悪

単純CT横断面像
単純CT横断面像
膵頭部(図の☆印)と十二指腸(図の♢印)の間の窪み領域(groove領域)を中心として腫脹と浮腫を認める(図の矢印)。
患者は40歳代の男性で、上腹部痛で来院され、血液所見では急性膵炎が疑われ、腹部単純CTを撮影したところ、膵頭部と十二指腸Cループ及びその間のgroove領域に腫脹と浮腫が認められ、groove pancreatitisの急性増悪と診断された。
Groove領域とは十二指腸下行脚と膵頭部, 総胆管に囲まれた窪みの部分であり、胃十二指腸動脈が走行する。Groove pancreatitisとは「Groove領域を中心とした限局性の慢性膵炎」であり、患者の80 %が大酒家である。発症機序は不明だが、長期のアルコール摂取が粘稠度の高い膵液分泌を誘発し、膵液の流出障害や膵液鬱帯をきたすことが原因ではとされている。
なお同じ部位に出現する膵癌(groove pancreatic cancer)も報告されており、膵癌の慎重な鑑別が必要であることは、他の膵炎の場合と同様である。
単純CT冠状断像
単純CT冠状断像
膵頭部と十二指腸の間の窪み領域(groove領域)を中心として腫脹と浮腫を認める(図の矢印)。

症例9 SMA(上腸間膜動脈)症候群に合併した誤嚥肺炎

単純CT横断面像(肺野)
単純CT横断面像(肺野)
両肺下葉に肺炎が散在(図の黄矢印)し、食道も拡張(図の赤矢印)しており、高齢者であることとあわせて、誤嚥肺炎が疑われる所見である。
患者は80歳代の女性で、特別養護老人ホーム入所の方で、発熱したため同併設診療所で抗生剤治療を受けたが、改善が遅々として進まないため当院へ紹介/来院され、精査のために胸腹部単純CTが実施された。
CTでは両下肺に誤嚥肺炎が認められ、食道と胃と十二指腸が著明に拡張していた一方で、小腸と大腸の拡張は認めなかった。以上から、SMA症候群に合併した胃拡張のため、食道への逆流が発生し、誤嚥肺炎が生じたと診断された。
SMA症候群は、一般には急激な体重減少のため、上腸間膜動脈(SMA)周辺の脂肪やリンパ組織がなくなり、前方にある上腸間膜動脈と後方にある腹部大動脈と脊椎に十二指腸の第3 屈曲部が締めつけられることにより生じる。本症は体重減少が急速に生じる疾患群でおこるため、原因疾患は多岐にわたるが、なかでも神経因性食思不振症の若年女性で生じる割合が多いとされる。本症は通常は高齢者での発症は少ないとされるが、本例ではある意味で老衰に近く、最近かなり痩せておられたことが要因となったと思われる。
単純CT横断面像
単純CT横断面像
上腹部では胃(図の黄矢印)と十二指腸(図の赤矢印)が著明に拡張しているが、小腸や大腸の拡張は認めなかった。

症例10 ポーランド症候群

img_housyasenka_case10-1
健診での胸部X線撮影正面像
左‐大胸筋の陰影の欠如(図の黄矢印)と左‐第2肋骨低形成(図の赤矢印)に加えて、心臓の右側への変移(図の緑矢印)を認める。 患者は40歳代の男性で、症状はなく、人間ドックの胸部X線撮影でたまたま左胸郭形成異常と心臓の右方変移がみつかった。2年前に胸痛の精査のために胸部単純CTが施行されており、その画像との突き合わせをしたところ、ポーランド症候群と判明した。
ポーランド症候群は、片側胸郭異常(大胸筋欠損や肋骨や乳腺低形成など)を主とする疾患で、男性に多く原因不明だが、胎生期の薬剤使用に原因があるとされている。本例では、左‐大胸筋欠損と左‐第3肋骨低形成に加えて、心臓の右側への変移を伴っていた。胸郭や乳腺の左右アンバランスが目立つ場合は、形成外科的/美容的な観点から治療の対象となることがある。美容上の問題以外では病的意義は乏しく、医療上の観点からは特に治療は行われない。
2年前の胸部単純CT横断面像
2年前の胸部単純CT横断面像
左‐大胸筋欠損(図の黄矢印)と左‐第2肋骨低形成(図の赤矢印)に加えて、心臓の右側への変移を伴っており、ポーランド症候群と診断された。

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