患者さんへのお願い

患者さんへのお願い

臨床情報、検査試料、生体組織摘出標本などの医学研究、教育、啓蒙への利用に関するお願い

はじめに

私たちは現在考えられる最高の診断、治療を患者さんに提供できるように日夜努めています。また、京都大学医学部附属病院をはじめとして、地域の診療所や病院との連携のもと、日夜研鑽に努めています。さらに、診断・治療に苦慮する疾患を対象に、新しい診断、治療、予防技術の開発にも取り組んでいます。このような医学の進歩のための研究には、皆様の診療に伴って発生する試料などの情報の利用が不可欠です。また、私たちは、当医療団の看護学校などで教育に携わっているほか、患者さんや一般の方に病気について説明することにより、医学の啓蒙も行っています。これから、当院における皆様の試料などの保管と、研究などのための手続きについて、説明させていただきますので、ご理解のうえ、ご協力いただきますようお願いいたします。

1.がん登録について

がん登録はがんの種類別の診療内容や生存率を検討することにより、診療や予防に役立てるものです。院内規模(院内がん登録)、自治体規模(地域がん登録)などに分けられます。当院では院内がん登録が行われています。情報の精度を高めるために、お住まいの市町村の担当部署へ診療後の生存確認をさせていただくことがあります。地域がん登録は地域のがん診療の評価を行うためのもので、京都府の事業として行われます。厳密な情報管理のもと、府下の各病院の院内がん登録の情報は地域がん登録室に提供されます。診療を受けた施設では、当然のことながら情報と個人とは結びついていますが、施設外に出るときには個人は特定されなくなる仕組みです。どちらも、日本のがん診療の把握や今後の医療政策のためにかかせないものです。

2.診療に伴って発生する試料などの管理

この病院で診療を受けられますと、あなたの病気やあなた自身に関するいろいろな検査試料や診療情報が集められます。主なものは、病歴(カルテ)、レントゲン写真や内視鏡写真などの画像情報、血液や尿などの検査試料、診断のための生検(内視鏡検査などの際に組織の一部を採取すること)試料、手術で切除した組織などです。当院では、病歴、レントゲン写真、内視鏡写真、病理標本、血液、尿などが適切な管理体制により保管されています。

3.診療と研究

あなたの診療に使用された後、保管される試料や、それに関連する診療情報は、今後の医療の進歩のために行われる研究に大変貴重な材料となります。どんな診断法や治療法も研究・開発の初期段階では、まず過去の患者さんの試料・情報を検討することから始まります。

4.診療あるいは検査後の保管試料と診療情報の医学研究への利用の原則

医学の進歩は、たゆみない研究の積み重ねの上に成り立っています。そして、医学研究においては、あなたの診療に使われた試料やそれに関連する診療情報が欠かせない場合が少なくありません。これらの試料や診療情報を研究などに利用するときは、個人の秘密が厳守されることはいうまでもありません。さらに、個人情報保護の観点から、これらの試料や診療情報を研究などに利用する場合には、原則としてあらかじめ同意をいただくこととしています。しかしながら、診療後の保管試料や診療情報を、医学の研究や教育、啓蒙などに利用させていただく場合には、このように前もって了解をいただくというステップを踏むことが困難な場合があるので、このように事前に同意をお願いする次第です。そこで、みなさまの大切な臨床試料や診療情報を研究に利用させていただくために、この説明書を作成しました。もし、利用に同意していただいた場合でも、あらかじめいただいている同意の範囲を超えると判断した場合には、あらためてその内容を説明させていただいた後、研究に協力いただけるか否かの同意をお願いすることになります。

5.研究における倫理委員会の役割

当医療団に設けられた倫理委員会では、(1)研究の重要性と研究方法の妥当性、(2)患者さんの人権の保護、(3)すでにいただいている同意の範囲内で、診療後の保管試料や診療情報を研究に利用することが適切かどうかを審査します。倫理委員会の委員には、医学関係者の独断を防ぐために、院外から法律の専門家などの方々も加わっていただいています。なお、皆様の個人情報の管理は十分慎重に行い、プライバシーの漏洩がないようにすることは言うまでもありません。

6.予想される研究の内容

院内がん登録データは院内で行われる臨床研究の対象症例の選択に用いられます。また、院内のその他の診療情報と組み合わせ、『医療の質の研究』や『生存率調査』などにも利用されます。院内がん登録を使って、他施設の院内がん登録情報と比較して、診療の精度や病院の役割を検討するような研究も行われています。いずれの研究においても個人が特定されるような形で情報が外部に伝達されることはありません。

一方、検査資料・生検組織・摘出標本に関して、現段階で考えられる研究としては、疾患の発症や増悪、疾患に伴うさまざまな症状、種々の治療法の効きめや副作用の出方について、遺伝子のレベル、蛋白質のレベル、細胞や組織の形のレベル、血液や尿・糞便などに対する臨床検査のレベル、放射線、内視鏡、超音波などの画像のレベルなど、いろいろな角度から照らし合わせて、診療との関係を明らかにし、新しい診断法や、治療法・予防法を開発するための研究が中心になると考えられます。研究方法としては、摘出した組織を冷凍保存しておいて用いる方法、細胞をガラス容器の中で増やす方法(培養といいます)、通常の病理組織検査に用いたホルマリン固定標本を用いて行う方法、保存されている血清や尿を用いる方法などがあります。このような研究の多くは、研究で得られたデータと皆様の診療情報とが結びつけられてはじめて有意義な研究となります。

そこで皆様には、プライバシーの保護に細心の注意を払うこと、事後の拒否権の行使を保障することを条件に、診療に伴って発生した試料、情報をこのような研究に使うことの許可をお願いする次第です。ことに遺伝子解析研究では、プライバシーの保護は厳重に行われること、個人情報識別管理者の責任において、匿名化された試料、情報を用いて行うことを申し添えます。

7.同意の自由、同意撤回の自由

今回のお願いに対して同意をするかどうかはあなたの自由であり、あなたの意思に基づいて行ってください。あなたが同意されなかった場合、試料や診療情報は研究には使用しませんが、その場合においても、あなたの診療にはまったく影響はありません。また、いったん同意した後でも、同意を撤回することも可能です。この場合は、あらためて同意撤回書に署名をお願いすることになります。

8.研究結果の公開

診療後保管試料と診療情報を利用し実施される研究については、その研究成果を学会発表や論文などにより公開することがあります。なお、当然のことながら、公開内容には個人のプライバシーに関わることは含まれません。

9.その他

研究によっては、その結果において知的財産権が生じることが考えられます。このような場合に、その権利は研究者あるいは当院に属するものであり、患者さん個人には属さないという立場をとります。これは国内外の他の研究機関でも同様です。

また、今回の同意の対象となる研究は、あなたの診療に影響を与えることはまず考えられませんし、研究のための費用もかかりません。また、謝礼等をお渡しすることもありません。

10.診療情報や試料の研究以外への利用

私たちは、当医療団の看護学校をはじめ、大学などで学生の教育に携わる場合があるほか、医師や一般市民を対象とした講演などを行うことがあります。また、病院や医療団のホームページなどで、患者さんや一般の方を対象として病気の説明を行うことを通して、医学の啓蒙も行っています。これらの場合に、病気についての理解を深めていただく目的で、診療情報を使わせていただくことがあります。

11.さらにご質問がある方へ

以上の説明に関して、さらにご質問がある方は担当医に申し出てご確認ください。

12.最後に

以上のお願いは、あくまでもあなたの臨床情報、研究などにおける情報や試料の使用に関するものであって、診断やこれからの治療に不可欠な検査に関しては当てはまるものではありません。皆様の温かいご理解をお願い申し上げます。

問い合わせ先

日本バプテスト病院
電話番号:075-781-5191