消化器化学療法

消化器化学療法

胃癌に対する治療

日本胃癌学会により提示された胃癌治療ガイドラインに基づいた化学療法を行っています。
医師用胃癌治療ガイドライン:「胃癌治療ガイドライン 第6版」
2021年7月改訂 [第6版] 日本胃癌学会/編

  1. 進行胃癌に対する術前化学療法
    いわゆるスキルス胃癌や病期の進行した胃癌(病期3~4)では、必ずしも拡大手術だけでは予後の改善に結びつかないことがわかってきました。そこで、昨今の化学療法の高い奏功率を期待して、手術の前に約1‐2ヶ月間の化学療法を行うことで、ある程度の腫瘍の進展をコントロールした後に拡大手術を含む根治術を行います。具体的な薬剤としては、内服薬のS-1、カペシタビンや注射剤のCDDP、CPT-11、タキサン系やL-OHPなどと分子標的薬トラスツズマブを効果的に組み合わせる方法をとっています。
  2. 手術不能・再発胃癌に対する化学療法
    最近の化学療法の進歩により高い腫瘍縮小効果(奏効率)が期待できるようになりましたが、いまだ化学療法による完全治癒は困難であり、国内外の臨床試験成績の生存期間の中央値(median survival time:MST)はおおよそ6~13カ月です。化学療法の臨床的意義は、PS 0-2の症例を対象とした、抗癌剤を用いない対症療法群と化学療法群との無作為化比較試験において、化学療法群に生存期間の延長が検証されたことや、また少数例ではあるが長期生存(5年以上)も得られたことより、切除不能進行・再発癌、非治癒切除症例に対して有意義なものとされています。したがって、癌の進行に伴う臨床症状発現時期の遅延および生存期間の延長を治療目標として行われます。

HER2陰性胃癌の場合

一次治療
S-1+シスプラチン、もしくはS-1+オキザリプラチン
もしくは
カペシタビン+シスプラチン、もしくはカペシタビン+オキザリプラチン
さらに、ニボルマブを上記に加えて投与することも可能になりました。
二次治療
ドセタキセル、パクリタキセル、もしくはイリノテカン
ラムシルマブ、もしくはラムシルマブ+パクリタキセル
三次治療
ニボルマブ、TAS-102、もしくは二次治療に使用していないレジメン
四次治療
可能であれば、上記未使用レジメン

HER2陽性胃癌の場合

一次治療
トラスツズマブに以下のレジメンを加える。
S-1+シスプラチン、もしくはS-1+オキザリプラチン
もしくは
カペシタビン+シスプラチン、もしくはカペシタビン+オキザリプラチン
二次治療
ドセタキセル、パクリタキセル、もしくはイリノテカン
ラムシルマブ、もしくはラムシルマブ+パクリタキセル
三次治療
ニボルマブ、TAS-102、もしくは二次治療に使用していないレジメン
四次治療
可能であれば、上記未使用レジメン

大腸癌に対する治療

大腸癌研究会により提示された大腸癌治療ガイドラインに基づいた化学療法を行っています。
医師用大腸癌治療ガイドライン2022年版

  1. 進行直腸癌には、術前化学・放射線療法(経口フッ化ピリミジン系剤、CPT-11と放射線照射)を先行し、その2~4週間後に根治術を施行します。その手術には、腹腔鏡下手術を積極的に取り入れ、また、全直腸間膜切除術や自立神経温存手術を導入することで、肛門・排尿・性機能などの骨盤神経機能や、肛門に近い下部直腸癌でも可能な限り肛門括約筋機能、自然肛門温存を目指しています。特に後者では、一時的な回腸人口肛門を超低位前方切除術に併用することで術後縫合不全を未然に予防し、約6ヵ月後に局所再発などの無いことを確認した後に人口肛門を閉鎖することにしています。肝転移や肺転移を合併する症例にも可能な限り外科的切除を第一選択とし、他臓器浸潤症例には合併切除などの拡大手術を考慮します。
  2. コンバージョン治療
    以上の拡大手術でも根治手術が困難と予想される症例には、昨今の化学療法の高い奏功率を期待して、手術の前に約1‐2ヶ月間の化学療法を行うことで、ある程度の腫瘍の進展をコントロールした後に拡大手術を含む根治術を行う、コンバージョン治療も取り入れています。具体的な薬剤としては、内服薬のS-1、カペシタビンや注射剤のL-OHP、CPT-11などと分子標的薬ベバシズマブ、セツキシマブやパニツムマブを効果的に組み合わせる方法で、特にRAS遺伝子に変異のない大腸癌例には有効とされています。
  3. 直腸癌などの局所再発に対しては、FDG-PETなどの画像診断を取り入れることで、早期に再発病変を把握し評価するようにしています。切除不能例では、京都大学放射線科との連携により放射線照射療法を導入することで、QOLを考慮した外来通院による化学療法との併用治療を行っています。
  4. 再発大腸癌に対する化学療法
    最近の化学療法の進歩によってMST は3年以上にまで延長してきましたが、いまだ治癒を望むことは難しい状態です。化学療法を実施しない場合、切除不能と判断された進行再発大腸癌の生存期間中央値(MST)は約8 カ月と報告されていますが、PS 0~PS 2 の症例を対象としたランダム化比較試験において、化学療法群は対症療法(BSC)群よりも有意に生存期間が延長することが示されました。したがって、現時点での化学療法の目標は、腫瘍増大を遅延させて延命と症状コントロールを行うこととなります。
    Cmab、Pmab はKRAS 野生型のみに適応され、特に一次・二次治療においてBmab や抗EGFR 抗体・RAM・AFLなどの分子標的治療薬が適応となる症例には化学療法との併用が推奨されます。一方、分子標的治療薬の適応とならない場合は、化学療法単独が推奨されます。切除不能進行再発大腸癌に対する化学療法が奏効して切除可能となることがあります(コンバージョン)。
一次治療
FOLFOX、FOLFIRI、XELOX、SOX、FOLFOXIRI、Cape、UFT+LV
以上のレジメンに、以下の分子標的薬を併用します。
Bmab、Pmab、Cmab
二次治療
不応・不耐となった一次治療レジメンに含まれたOX、IRIを含まないレジメン
FOLFIRI、IRIS、IRIに、以下の分子標的薬を併用します。
Bmab、Pmab、Cmab、RAM、AFL
FOLFOX、XELOXに、Bmabを併用。
三次治療
二次治療に含まれなかったレジメン
IRIにPmab、Cmabを併用
Pmab、Cmab、Regorafenib、TAS-102にBmabを併用。
四次治療
三次治療含まれなかったレジメン

肝臓癌に対する治療

科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドラインに則った治療を行っています。
肝癌診療ガイドライン2021年版

膵臓癌、胆道癌に対する治療

科学的根拠に基づく膵臓癌診療ガイドラインに則った治療を行っています。
日本膵臓学会膵癌診療ガイドライン2022年版
日本肝胆膵外科学会胆道癌診療ガイドライン第3版 2019年6月30日発行

進行・再発膵癌の化学療法

進行膵臓癌では、その手術後の予後が望めない例が多いため、手術以外の方法を積極的に考慮します。京都大学放射線科との連携により、放射線や、ゲムシタビン、イリノテカン、S-1、nab-パクリタキセルなどの化学療法との集学的治療を目指しています。化学療法の使用にあたっては、日本癌治療学会 がん診療ガイドライン委員会の作成した抗がん剤適正使用のガイドラインに基づいて治療を行っています。

一次治療
GEM単剤、S-1単剤、GEM+S-1、GEM+nabPTX、FOLFIRINOX
二次治療
一次治療後の状態をみて、一次治療以外のレジメン

進行・再発胆道癌の化学療法

一次治療
GEM単剤、S-1単剤、GEM+S-1、GEM+CDDP
二次治療
一次治療後の状態をみて、一次治療以外のレジメン

進行・再発GISTに対する治療

日本癌治療学会GISTガイドライン委員会で作成された『GIST診療ガイドライン』(第4版2022年)に則った治療を行っています。

一次治療
ベースラインCT(FDG-PET)による治療前評価の後、イマチニブの治療を開始します。治療開始後 1ヵ月以降で画像による評価を行い、イマチニブ継続投与を可能な限り維持します。切除可能と判断される場合には、手術となる場合があります。
二次治療
イマチニブ投与開始180 日までの一次耐性では、GIST 診断の再確認を行い、c-kit やPDGFRA 遺伝子変異の確認を行うことが望ましいとされています。イマチニブ耐性部分が切除可能である場合には、外科切除、TAE、RFA などでイマチニブ耐性病変を治療した後、イマチニブ治療を継続します。切除不能の場合には、スニチニブに変更します。
三次治療
スニチニブ耐性になった場合、レゴラフェニブに変更します。
四次治療
ピミテスピブ(HSP阻害剤)
五次治療
以上のTKI : tyrosine kinase inhibitor (イマチニブ、スニチニブ、レゴラフェニブ)治療終了後も、比較的PS が良ければ忍容性の高いTKIを継続或いは再導入する場合もあります。